今回の調査は、前回に断念した大規模落石の先に存在するはずの林道最終点をこの目で確認する決意で臨んだ。走行記録というよりは探検に近い記録である。前回は、大岩のところで車を降りた後、大規模落石地点までかなり歩かされたので、今回は大岩をクリアして行けるところまで車を入れるつもりである。これまでの様子からしてやはり大岩クリアが最大の難関になると思われる。笹谷街道の林道起点でトリップメーターをリセットする。

行く手を阻む大岩 | 5.8km地点に落下した大岩。普段通りブドウ沢清水(ブドウ沢清水全景)を通過してここまで到着。願わくば例の大岩が除去されていることを期待して来たが、大岩はあいかわらず行く手を阻むように鎮座していた。これより先は危険だらけなので、車が入れないように意図的にそのままにしているのか、それともこの林道自体、さじを投げられて修復など金輪際行わないということなのか。幅員は車幅ギリギリという感じだ。実際の道は車幅よりも狭い感じで、路肩に小枝が渡されて岩の破片を詰めて幅員を稼いでいる状態である。人間が乗っただけでもグラグラと動く。ちょっとハンドル操作を誤れば間違いなく脱輪するだろう。へたをすればそのまま転落の憂き目か… |

6.7km地点 | 普段は慎重な筆者だが、少しでも歩く距離を減らすため、危険を承知で大岩をクリアせねばならない。誘導者がいればもう少し楽なのだろうが、予め大岩と車体の間隔がどのくらいまでなら落ちないという目安を頭にたたき込んだ。そして窓から首を出して大岩との距離を測りながら、ハンドルの向きを微妙に操作してようやく通過した。最後はこの緊張感から逃れたいためか無意識に「えいや!」とアクセルを踏み込んでしまった。しかし、クリアしたのはいいが、今度は帰りが心配になってきた。運転席からでは大岩との距離は測れない。乗せたくもない手作りの路肩にタイヤを乗せて、落ちない範囲を目安に徐行するわけだが、大岩にちょっとでも触れたらその反動で落ちてしまう恐れもあるからだ。まずは往路の難所を通過。そのまま6.3km地点の治山ダムを通り過ぎ、前回まで7km地点と紹介していた6.7km地点へ到着する。 |

ここで車を降りる | 起点から7.2kmの河原に通じるところまで入ることが出来た。(ここでは写真を撮り忘れたので、前回に撮ったものを使用した)
さすがにここまで入ってくる車は最近は無いようだ。伸び放題の草で車はガリガリに擦られてしまった。(筆者のジムニーはすでにボコボコ状態なのでどうでもいいことだが…)これから先の道は、狭い上、草が伸び放題でとても車が走れるような状態ではない。ザックに少々の装備を詰め込んで歩くことにする。それにしても5km地点のブドウ沢登山口あたりでは、沢が数十メートルも下を流れていてものすごい高度感だったが、ここでは同じような高さにある。かつては芋煮会などにずいぶん使われたのではなかろうか。 |

崩落地点 | ここが前回に調査を終了した完全崩落地点。場所は1つ前の写真で中央に見える尾根の向こう側へ少し行ったところである。距離はおよそ300m歩いたとして7.5km地点としておこう。この手前にも大きな崩落があるのでバイクでもここまでは入れないだろう。側を流れている沢もさほど落差が無いので、崩落の上に立っても恐怖感は無い。 |

きれいな林道 | 前日に雨が降ったようなので、落石に注意しながら慎重に崩落地点を乗り越えてくると、その先にはまだ林道の名残があった。前方は草で塞がれているようだ。草を掻き分けながら進んでいく。すると、なにやら怪しい動物の糞。ちょっとビビる。この辺りの山域は熊の宝庫らしいので、熊鈴を音がよく鳴る位置に着け直す。 |

草本に閉ざされた林道 | さらに進んでいくと、道は草本に閉ざされてしまってトンネル状態。進む気力さえ無くなってくる。閉口…。真ん中に見えるのはチロのお尻。背丈の低いチロが怨めしい。 |

林道が開けた | 草藪のトンネルをくぐり抜けカーブを回り込むと、林道は明るく開けてきた。道幅も広くなっていて広場のような感じに見える。概ね林道の終端は車が回転できるように広くなっていることが多いので、そこが終点かと期待したが、近づいてみれば林道はその先にも執拗に延びていた。 |

林道は続く | また1つの崖を回り込むとずっと向こうに林道が続いているのがわかる。いったいどこまで続くのだろうか。先が思いやられる。地図では8kmくらいで終点かと思っていたが、とうに過ぎているような気がするのだが… |

終点を示す表示板 | ほどなくすると、道路脇の草むらの中に林道終点をにおわす表示板があった。「あと300mで終点。車は回転出来ないのでこれより先へは行かないように…」と書いてある。まもなく終点だ。先がわかれば足取りも軽くなるというものだ。 |

終点付近の景色 | 急ぎ足で歩いていくと前方が見渡せた。しかし、目に映った林道はもはや登山道のようであり、人ひとり歩くのが精一杯。何十年もほったらかしにされているような様相で、悲愴感さえ漂っている。沢も一気に迫りものすごい高度感だ。とてもルンルン気分では歩けない。終点は、距離的に奥の崖付近がにおうのだが、似たような景色を何度も見てきたので今ひとつ確信が持てない。 |

道を遮る倒木 | 慎重に進んでいくと、その先には道を完全に遮る倒木があった。あとわずかだというに、じゃまな倒木である。 |

小川のような道 | おまけに倒木付近の道は水の流れる小沢と化していた。濡れないように気をつけていたが、やっぱり無理だった。 |

深く落ちる沢 | 眼下の沢との高度差はそうとうなものがある。一箇所だけセメントで路肩を固めた残骸もあった。こんな恐ろしい所に一般車が走れるような道を切り開く計画があったのだろうか。いつか写真で見たカラコルムハイウェーのインダス川沿いを通る数百メートルの高度差の崖道を思い出してしまった。道を開くには、おそらくブルドーザーなどの工事車両が使われたであろうが、運転者もさぞ大変だったろう。車両の回転など出来ようはずもなく、落ちたら終わりだし… |

終点前の完全崩落 | 朽ち果てた林道を一歩一歩進んでいくと、その先は完全な崩落になっていた。いよいよ終点か!先はどうなっているのだろう。とりあえず確認してみよう。 |

林道終点 | 崩落を越えてみれば、見るも無惨な風景がそこにあった。乗り物が通れるような幅員は全く無い。今度こそこれが林道終点なのか。林道と言うよりは崖道である。断崖絶壁の上に細い道らしいものがついている。7.2km地点の車を降りた場所からいったいどのくらい歩いたのだろうか。1kmくらいだろうか、2kmくらいだろうか、さっぱり見当がつかない。 |

もうやめた! | それでも納得せずに崖道を木の枝を掴みながら渡ってみた。狭いところで10cm幅くらいか。しかも岩の道は濡れている。高所恐怖症の気がある筆者にはものすごい恐怖感だった。落ちたら100%助からないだろう。ままよと渡り終えたその先は完全な藪になっていた。しばし目を凝らすとセメントの固まりのようなものが見えた気もする。だが、もう人の歩ける道ではない。百歩譲ったとして、林道の残骸である可能性は否定できない。しかし、自分の中では「それは昔からあった山道痕に違いない」と必死に打ち消していた。「この先には林道など存在していないのだ。これ以上進めば無事に帰れる補償は無いかもしれない。もうやめにしよう。」そう自分に言い聞かせて小屋の沢林道の探検は終了した。帰路を辿りながら、今度はあの大岩の通過が心配でならなかったのは言うべくもないことである。 |